
コンテというのは5cmぐらいのスティック状のチョークでそれ自体にほとんど固着力はない。それ故に仕上がったものは定着液を吹いておかないと飛んでしまう。画用の木炭と鉛筆の中間ぐらいの描画用具だといえる。
クロッキーは線が大切だ。ほとんど線によって成り立っている絵画と言っても過言でない。よって描画材としては鉛筆が一番適している。私は長い間10Bの鉛筆だけでクロッキーを行ってきた。即興的な線など鉛筆での表現は多様性があってそれはそれでとても面白かったのだが、線だけではどうしてもボリュームの表現がむつかしい。
コンテを使う事で一気にそれが解決できるようになった。最近はどちらかといえば最初に大きな明暗というのか、空間を作ってしまう。これはデッサンの表現にちかいのかもしれないが、そうすることでもっと線が生きてくるように思う。何十年もこんなことをやって今更気づいた。
線というのはわりと先天的なもので、練習したから上手くなるという事はないように思うな。字をみると大体その人の持っている癖というのかバランス感覚みたいなものが分かる。字が綺麗な人は線の感覚がいいように思うな。
私は小学生のような字しか書けない。今はこうやってキーボードがあるから普通に文章がかけるけれど、これが生の字だとそうはいかないだろう。そう思っている人は割と多いのじゃないだろうか。
昔読んだ藤島武二の言葉に「絵画の妙は複雑なモノを簡単にする事である」とかなんとかあったのを思い出した。クロッキーの妙もそれのように思う。身体の線は微妙に複雑に変化している。それをそのまま追ってしまっては全体のバランスが壊れてしまう。反対に余りにも単純化してしまうと人体のまろやかさを損ねてしまう。そこのところの兼ね合いが
難しい。