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あそびべのHARU・ここだけの日々
画家・榎並和春

映画「ドライブ・マイ・カー」を観た。 - 2022.02.18(ブログ)
無題3
はる 7594
一部ネタバレなので、気にする人はスルーしてください。
 映画「ドライブ・マイ・カー」を観た。3時間だけど、あっという間に過ぎた。超大作という感じはしなかったな。カンヌではもう受賞しているらしいので、まぁフランス人好みの映画かもしれん。恋愛映画ではないけどね。原作が村上春樹だからもっと奇想天外なストーリーかと思ったけれど、映画版はある意味分かりやすい展開にはなっていた。でもまぁ文学的といえばそうかもしれん。私的にはかなり面白い映画だと思ったな。
 色々なテーマが錯綜して流れてメインを絞ることはむつかしいけれど、主人公は舞台の演出家であり役者でもあるという設定だ。彼はもうそこそこ認められた役者であり、今回は役者としてではなく一人の演出家として一つの舞台を任される。多くの役者が世界中から公募されて一つの舞台を色んな言語、手話などで総合的に組み合わされて作られてゆく。色んなが言語が飛び交うながらも違和感なく一つの舞台が作られてゆくというのもこの映画の魅力かもしれないな。こういった手法があることさえ知らなかったので新鮮だった。ただ高度に洗練されたチェホフの戯曲があるから出来る事かもしれないな。
 ただ当然テーマはそんなところにはない。彼はある意味この世界では認められた存在で、奇麗な伴侶にも恵まれ成功した人物として描かれている。役者という職業ははたから見れば華々しく格好のいい憧れの仕事のように見える。実際成功すれば大きな地位も名誉もお金も得るのだが、表現者という職業はそれだけでは済まないところがある。彼のように高い評価を得たものは反対に何かを代償として払っている場合が往々にしてある。
 彼の場合一番信頼している妻に裏切られる。それを知っていながら彼女との関係が壊れてしまう事を恐れてそのままにしてしまう。そうやって偽りの関係を続けて行くのだが、ある突然彼女は亡くなってしまう。亡くなってしまったことでさらに心の闇の部分を抱え込んでしまう。その現実の闇の部分と劇中劇のチェホフの「ワーニャ叔父さん」が交互に関係しながら進んでゆく。絶望に陥り、苦悩しながらも“死”ではなく“生”を選び取っていくという内容だ。舞台の最終章で韓国人の手話で語られるセリフはなかなか泣けるものだった。ただ、こういってしまうとハッピーエンドな軽い作品に映ってしまうのだが、そうではないことを実際に映画館で観て確認してほしい。
 久しぶりにいい日本映画だった。

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