
はる 7569
旅寝の夜話 榎並和春
そうだな、今だから言えるのかもしれんな。こうやって巡回展を始めた当時は今のこの形を予想していたわけではない。20数年やってきて、結果的にこういう形が出来上がっていた。何となく始めたことがやがては大きな道筋になって、やがて本道になって行くってことってよくあることだ。最初からこうやって巡回展をやって行けば何とかやって行けるだろうと計算出来たらそれは私ではない。
どういう風に生きて行きたいのかということだな。ただ有名になるとか、地位や名誉が欲しいのか。そうじゃないわけだな。生業として職業として職人になりたいわけでもないわけだ。それなら就職して働いた方が何倍も楽だ。自給自足というのかな、実際に食べ物をそだてるのではなくてね、思想上の自給自足なんだな。あでもないこうでもないと考えながら思考の芽を育てて、絵や文章で表現する。それを世の中に問うて、少しばかりの糧を得る。こんな生き方ができれば理想だな。こういうのを何というのだろう。
昔の旅芸人とか漂泊者とか旅の役者など、そんな生活者じゃなかったな。今年もまたそんな「旅寝の夜話」を聞いてください。