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あそびべのHARU・ここだけの日々
画家・榎並和春

定時制高校 青春の短歌 - 2006.07.07(日記)

 無断転載します。

原文は高塚門扉」サイト
http://www.geocities.jp/takatukamonpi/54minami.html


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定時制高校 青春の短歌
                         兵庫県立神戸工業高等学校  南 悟

働き学ぶ生徒の歌を
 働きながら学ぶという営みは、定時制高校生のかけがえのない貴重な財産です。こうした彼らのいとなみを、国語の授業を通してなんとか表現できないだろうかと考えて取り組んだのが「短歌」の創作でした。もう二○年ほど前のことです。
    工場の昼なお暗い片隅で毎日向かうフライス盤  Y・K
 短歌の授業を始めるきっかけを与えてくれた生徒です。授業中、いつも大声でしゃべり続けている傍若無人の彼が、仕事をしているのかという驚きでした。教室の中だけで生徒を判断してはいけないということを気付かされたのです。

仕事の歌
 荒れた中学校生活を送り、夜間定時制高校に来て自分を取り戻しつつある生徒たちが、仕事の苦楽を短歌に詠んでいます。いずれも一年生で一五、六才の少年たちです。昼の学校では得ることの出来ない価値が、働き学ぶという営みの中に見いだせるようです。
    俺は今大工の華咲く一五歳足場に上り破風板を打つ
    作業着の汚れ気にせず働くが「汚れ落ちへん」おかんが怒る
    潮風の匂う運河の貯木場藻に足取られ海中ドッボーン
    作業服ドロドロ汚して一ヶ月給料もらいみんなでカラオケ
    現場にて可愛い娘見とれ踏みはずし番線からまりニッカびりびり
    鉄工所僕の仕事はフライス盤仕上げの削り幅五○ミリ
    ペンキ屋で塗料まみれの仕事終え夜学へ向かう足どり重い

 昼の学校に行けなかったことから来る、口惜しさや怒りや挫折の思いを抱えて、荒れている生徒や押し黙ってしまった生徒たち。“誇りうる”ものとてない生徒たちが、自分に自信を持ち始めるのは、実に、この昼に働き夜に学ぶという生き方によるところが大きいのです。
 長い時間と字数を要する作文でもなく、言葉を自由に駆使しなければならない詩でもなく五七五七七の定型であったということにも少なからぬ意味があるようです。自分の感情や生活の事実を五七五七七の「定型」に集中させることで、一つの表現が生み出され、自分を客観的に見る喜びが見つけ出されるのでしょう。
 直接の契機は、筑摩書房の教科書『国語二』(旧)に、近藤芳美氏の「無名者の歌」という短歌教材があり、無名の働く人たちの歌に、生徒たちの共感が寄せられたからです。
    一日の乗務を終えて洗車する満天の星の下われは小さし  小峰 文子
 無名の働く人々の歌は、夜間定時制高校生の心を射ます。「仕事の歌なら僕たちも詠めるなあ」との生徒の発言から始められました。

短歌がひきだすもの
 たいていの生徒は文章表現が苦手です。原稿用紙一枚書くのがやっとの生徒や、一行書くのも大変な生徒がいます。小・中学校を通じて、作文と聞けば心を閉ざし、さらには、鉛筆を持つことも、椅子に座ることも困難な生徒たちがいる中での「短歌」作りです。
 けれども、生徒たちには、身を削りながら働いている事実があり、家庭や社会の重圧の中で、けんめいに耐え生きている姿があります。悲しかったこと、口惜しかったこと、辛かったこと、腹が立ったことを内にためこみ、生きているのです。
    少ししか通えなかった学校に楽しみながら今通っている
    シンナーも暴走もやめ夜学生三回目やけど卒業するぞ
    母が死におやじ失踪兄と俺夜学四年目今生きている
    鉄工所ピアスおしゃれが仕事するいつもガンバル茶髪マン
    定時制通い続けて八年間父母の苦労に報いて卒業
    電動のノコギリ疲れる一瞬にわれは小指の先を失う

震災を詠む
 忘れることのできない震災から十一年が経ちました。貴重な神戸の若者の証言です。
    かけつける友の住まいは崩れ落ち生き埋めの友にわれは無力     T・S
    震災で隣家の家族がれき下埋もれた声と焼け野原            A・O
    木枯らしのガレキの中を探しあて吐く息白く新聞配る            K・I
    震災で神戸デパート焼け崩れ涙ながらに仕事失う             S・I
    手に負えへん崩壊家屋数えきれんジャッキアップしまくりまだ五○軒  Y・U
    寒風に更地の境界鋲を打ち立ち会い終えて測量始める          S・H
    配送中高速道より見渡せば復旧する町われを励ます            S・F

 短歌を詠むということは、さながら、多くの挫折や、様々に困難な生活を余儀なくされてきた生徒たちが、その苦しみの中から自分の尊厳を取り戻し、生きる勇気が与えられる作業のように思えてなりません。これからも、定時制高校生の歌を、彼らの生活の中から紡ぎだしていきたいものです。


 この短歌をフンフンなるほどな、と簡単に読んではいけない。この一行書くのにどれだけの時間を要したか、その忍耐強い指導に頭が下がります。


 まずもって彼らは教室に出てこない。出てきたとしても机の前に座って何かをするということに慣れていない。考えてみたまえ学校の外には楽しくて面白いことが山とあるのだよ。みんなが開放される夜になって、誰が好き好んで面白くも無い教室で「短歌」をひねるんだ?暇なご隠居じゃあるまいし。


 夜間の生徒に付き合ってもう25年になるからよくわかる。これは凄い!



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