
はる 6629
あの時以来ずっと何か重苦しい真実がとぐろを巻いている。言葉にするのは簡単な事なんだけれど、たったそれだけの事と済まされてしまいそうな気がしてはばかられる。
春が来て周りが一斉に芽吹いて、長い冬に耐えていた動植物が解放されたようにこの世の春を謳歌しているようだ。新緑は目に痛いほどで、鬱々とした気分も、この時ばかりは紛らわされる。
夏が来た。入道雲がむくむくと盛り上がって、遠い少年時代の夏休みを思い出す。少し寂しいような、昼下がりの昼寝。蚊取り線香の香り。
アジアの中でも飛びきり恵まれた自然環境があって、人々はそれなりに優しく丁寧に暮らすスタイルも自分たちのモノにして来た。
にもかかわらず、その昔に戻ることはもうできない。何処からも攻撃を受けたわけでもないのに、台地は汚れてしまった。どれだけ嘘でかためてみないふり、済んでしまったモノにしても、人々の心の奥底にしっかりと刻み込まれた傷がある。それがじくじくとうずくのだ。大きな声では言わないが日本人全員が気づいていることだ。あの戦争と同じ、共通共犯意識ではなかろうか。
この責任をうやむやにしてこれからの日本はないのではないか。汚した本人が「美しい日本を取り戻す」など何の話だ。このまま何の手も打たなければ、もう日本はだめじゃないかとさえ思うのだ。東電と政府の責任は重い。
選挙で落とすしかない。