
はる 6508
幼稚園は近所の子供たちとは違って少し遠い所まで一人で歩いて行った。その頃スクールバスというのが大きな幼稚園では使われ出した頃で、自分ちはその費用が出せなかったのだと思う。今から考えるとね。何故自分だけ遠く離れた学校に行かねばならなかったのか、薄々は分かっていた。親に云うと悲しむのでたぶん言えなかったのだと思うな。
その幼稚園は小高い丘の上に会って、自分の家からも見えた。休みの日には屋根に上って幼稚園の坂道を飽きずに眺めていたように思う。何故か少しさみしいんだな。その頃からグループ登校や下校もあったようだが、近所に同じ幼稚園に行く子供がいなかったので、私はいつも一人で長い坂道をとぼとぼ歩いて行ったように思う。
幼稚園に行く途中に朝鮮人の部落があって、ほとんどバラックのような掘立小屋に豚と一緒に住んでいた。強烈なにおいと豚の鳴き声が恐ろしくていつも駆け足でその部落を抜けるのだが、なぜあの人たちはあんな暮らしをしているのか、何故か誰にも聞けなかったな。近くに朝鮮人学校もあって、彼らは本当に怖いなといつも思っていた。
中学生になって同じクラスにちょっと言葉がオカシイ同級生がいた。確か村上君と言っていたかな。途中から突然苗字が李くんになった。大きな体つきで、部活は陸上部の長距離を走っていた。割と私とはよく話をした。ある時泣きながら自分がどんな差別を受けてきたかというようなことを話してくれて、純真な私は本当に驚いた。そんな世界があることに今更ながら知ったのだな。