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あそびべのHARU・ここだけの日々
画家・榎並和春

ポケットの窓から - 2017.01.12(ポケットの窓から)


はる 5745
 「こたえてください」というタイトルを思いついた時にこれだと手を打った覚えがある。それまでタイトルはあまり重要とは考えてはいなかった。それ故に例えば「作品1」とかよくてもそのまま「テーブルと椅子」「○○のある静物」のようなモノの説明が多かった。まぁ普通はそれでOKなんだけれどね。タイトルにあまり意味を持たせると絵そのものよりタイトルが独り歩きして良くないと考えられていた。いや自分でそう納得していたのかもしれん。

 それは絵は自分のイメージを表現するものであって、単に偶然そう見えたというだけで画面を作るのは邪道ではないか。あくまで描くということが主体であるわけで、あるものを利用して描かないのは絵を描いているとは言えないのではないか。とかってにダメ出しをしていたのとなんとなく似ている。誰に対してだめなのか?

 観る人はタイトルを含めて絵を鑑賞する。多くの人はまずタイトルを読む。そのイメージで何が描かれているのか理解しようとする。言葉というのはある意味で非常に共通の理解を得やすい。そこからイメージが個人のなかで広がって行く。

 たった一つの文字が言葉が決定的な意味を持つことが多い。絵を描く人は案外そのことに気が付いていない。言葉で表現できないことを絵で描くのだというのはよく言われることだけれど、もちろんそれも大きいのだけれど、例えば短歌とか俳句のように我々は一つの言葉に多重の意味を持たせるのが上手い伝統がある。それを利用しない手はない。そのことで何倍も表現として強くなることを知った。

 案外そうやって言葉を探すことで自分の中を何を表現したかったのか見つけるという仕事にもなっている。一つの言葉が見つかることで絵が今まで以上に強く人々のこころに訴えることを今までの経験で知った。

 例えば「平均律」というタイトルを付けた私の代表作がある。これが普通に「「ピアノソナタ」とか「若いピアニスト」であるならたぶんそれほど評価されなかったのではないか。平均律というのはある意味ピアノ曲のすべて、もっと言えばバッハからはじまって現代音楽も含めた音楽すべてを含んでいるような言葉なんだな。

 最初に描きだした時にはそんなこと考えていた訳ではない。描いている内にどんな音楽もピアノ曲も私が表現したかった音楽でないと思った。描きたかったことは音楽のすべて、旋律、リズム、ハーモニーその他の快い調和みたいなものだ。そのことが私の主題という風に思った。それにはどんなタイトルも合わない。「平均律」と思いついた時にこれだと思った。

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comment(2)

 
 
 そうですね。唯一美術館に入っている作品です。1990年の作品ですから27年も前の事です。

 
「平均律」。なつかしい作品です。あれからずいぶん時が過ぎたなあと思います。

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