あそびべのHARU・ここだけの日々
画家・榎並和春

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今日のアトリエ - 2015.01.17(ポケットの窓から)
はる 4944
 まれびとさんの日記 2015/1/16より転載の無断転載
http://www.geocities.jp/marebit/TOP.html
80年代の半ば。
 3DKの社宅の壁にはまだ抽象画はなかったし、書棚の本も少なかった。「こどもベや」 と呼ばれたわたしの部屋にはブルーナの小さなたんすがあった。そして 「り――――っ」と、身の毛もよだつ音を立てる赤い目覚まし時計があった。
 南向きの部屋は朝日が射し込み、街路樹のポプラの枝先が見える。小学校一年生のわたしは布団にくるまって、涙をがまんしながら新しい朝におびえる。大嫌 いな目覚ましは六時五十分をさしている。母の立てる音が聞こえる。台所で、水道の水を流している。カーテンの隙間から光が漏れている。
 わたしは、死んでしまいたいくらい朝がいやだ。布団を頭からかぶり、目をしっかり閉じる。今にも、短針が、目覚まし用に設定された銀の針に重なろうとし ているのが、目をつぶっているのにはっきりと見える。秒読みが始まっている。この瞬間さえ切り抜けられるものなら、「じごくにおちてもいい」とわたしは思 う。わたしは自分が生まれた日に戻りたい。もう一度同じ日々を暮らし、育ち、七年経って、今この時を迎えたらまた0歳の赤ん坊に戻るのだ。きつく閉じた両 目に涙がにじむ。息を止める。「きゅっ」と水道の栓を止める音がする。一瞬だけ、静寂の間がある。近づいてくる母の足音。わたしの神経をずたずたにする 「り――――っ」という耳元の目覚まし。
 わたしの名を呼びながら、母が「こどもべや」に入ってくる。寝たふりを決め込むつもりだったのにもうたまらなくなったわたしは大声で泣き叫ぶ。髪をかきむしり、着ているパジャマを引き千切ろうとし、布団を蹴って、あらん限りの大声で。
がっこういかない。がっこういかない。がっこういかない。おかあさんのばか。おかあさんのばか。おかあさんのばか。
 母はわたしにしがみつく。母は何か言っているがわたしには聞こえない。わたしには自分の声しか聞こえない。母はわたしを押さえつけるように抱きしめる。 母はもうそうするしかない。わたしは必死に暴れる。母の腕から抜け出したい。学校に引きずっていかれる恐怖の瞬間を一刻でも先延ばししたいばかりに叫び続 ける。おかあさんのばか。おかあさんのばか。おかあさんのばか。なんにもわかってないくせに。なんにもわかってないくせに。
 母の力が強まるとわたしの恐ろしさは最大になる。わたしは全力でもがき、噛み付いて母の手を逃れ、本棚にしがみつく。母が無理に引き離そうとすると子ど も用の低い本棚は倒れ、わたしの大好きな絵本が散らばる。『はるかぜのたいこ』『赤ずきん』『力太郎』『ちいさいモモちゃん』。わたしは急激に高まる悲し みを感じる。だってわたしは絵本たちをこんなに愛しているのに。わたしのせいでみんなを痛めつけてしまってごめん。恐怖の涙は悲しみを帯びて熱を増す。熱 は怒りに転じる。わたしはころがっていた赤い目覚まし時計を母に向かって力いっぱい投げつける。

 小学校一年生の二学期。わたしが学校を休み始めたころのことだ。
 こんな子どもに、「どうして学校に行かないの?」なんて聞けるだろうか。
 学校に行かない子どもに、「どうして学校に行かないのか」を聞くのは「暴力」だ。
 その質問には、「はんとうは学校に行かなければならないのに」という非難が含まれているし、しかも「それに答えるのはおまえの仕事」とすることで、不登校の子どもに、誰にも助けを求められなくさせ、その子を追いつめてしまう。
 この質問には、大人になった今でもすごくとまどう。
「どうして学校に行かなかったの?」
「不登校した理由を教えて」
いやーわたし実は小学校ほとんど行ってないんだよね、と言うと、必ず聞かれる質問。聞かれるたびに、「めんどくさいな」 と思う。
 どうして学校に行かなかったのかなんて、あのころもわからなかったけど今もわからない。よくわからないことを答えなきゃならないのだから、ほんとうに困ってしまう。
 だって、不登校の理由を聞かれたとたんに、こちらは、
「うちの親がこういう人たちでね、わたし昔からこういうふうに育てられてさー」
 と、「心理」 の言葉で語るか、
「学校って同じ年齢の人が同じ教室に集められて同じことするでしょ。そういう学校のシステムってやっぱりおかしいと思うんだよ」
 と、「社会」 の言葉で語るか、
「そのときの担任がすごく感情的に叱る人で」 「クラスにいじめがあったの」
 と、「教育」 の言葉で語るか、そのどれかしかなくなってしまうのだ。
 どれかを話せば相手が 「ふーん」 と神妙な顔で納得することはわかっているのだけど、それらの言葉を口にしたとたんに、自分の経験がものすごくウソく さい陳腐なものに思えてきて、イヤになる。言葉ばかりがどんどん遠くに行ってしまって、どんな言葉で説明しても、「わたしの不登校はそんなんじゃない」と 思う。
 わたしは、小学校一年生という、とても早いうちに学校に行かなくなったが、いじめとか体罰とか、そういう直接のきっかけはなかった。ただ「行きたくない!」という気持ちだけが半端じゃなく強くあった。
「不登校」 っていうと、「特別な子がすること」という気がするかもしれないけど、でも、学校に行きたくない気持ちなんて、べつに特別なもんじゃないと思 う。だって、学校に行ってる子どもたちだって、不登校の子を非難するのに「ずる休み」という言葉を使うもんね。そこにあるのは「うらやましさ」と「ねた み」だ。僕だって学校なんか行きたくない、けどがまんして行っているんだ、みんながまんして行っているのにひとりだけ「ずる」 は許さない、という思い。
 不登校の子どもは学校に傷つけられるけど、学校に行っている子は学校と不登校の両方に傷つけられる。不登校は、「学校に行かない」という選択肢を見せつけることで、学校に行っているすべての子どもたちの 「がまん」を侮辱する行いだ。
「行きたくないのにがまんして」学校に行ってる子どもが、どれほどいることだろう。そうではない子どものほうがめずらしいくらいだ。
 けれども、世の中の人びとは「子どもは学校に行くものだ」と心の底から信じているから、「行きたくない」と騒いだくらいでは不登校を許してはくれない。そこですじ金入りの子どもは発熱、おう吐、げり、チックなど身体症状で戦いを挑むことにな
る。
 親はびっくり。なだめすかし、叱咤激励、おどし、追いつめ、泣き落とし、慌てふためいた末に 「学校よりは命が大事」、アホか! とも思うそんなあたりまえのことに大人が気づいてようやく、不登校は認められるのだ。
 学校に「行く」と「行かない」は、正反対の違いではなくて、「程度の差」 に過ぎない。いじめとか体罰とか、説明しやすいきっかけを持っている人もいる けれど、それだって、ある意味では多かれ少なかれみんな学校という制度にいじめられたり暴力をふるわれたりしているのだから、「程度の差」だとあえて言い たい。いじめの加害者だって、大きく見れば被害者なのだ。そして、もっとも力の弱いところに被害が集中していくおぞましい構造がある。
「グレーゾーン」とか「不登校気分」とかいう言葉がある。不登校研究で有名な森田洋司さんという社会学者が、「学校に行くと行かないは紙一重、今は何とか行っているけどいつ行かなくなるかわからないグレーゾーンの子どもがたくさんいる」 という研究を発表している。
 わたしはこれに大共感。だけど問題はその先。だったら、どうなんだ?
 一九九〇年代の文部省の対応は、「そうか、今現在不登校になっている子どもだけ見ていてもだめなんだ。不登校予備軍にも注意を向けなければならない。不登校根絶には、早期発見、早期対応が必要だ」というものだった。
  だけど、重要なのはそんなことじやない。
  「どうして学校に行きたくないの?」
  それはきっと、誰でもみんなが知っている。人に聞く前に自分で考えてみてほしい。
  学校に行ったあなただって、「行きたくない」 と思った経験があるはずで、不登校の問題を「自分の問題」 として考えることが、きっとできると思うから。

貴戸理恵・常野雄次郎「不登校 選んだわけじゃないんだぜ!」(理論社)」

 



comment(2)

 
 
こんばんは。まぁ不登校は根が深いですね。上の文章を載せたのは、この年になってあの「学校に行きたくない、切ない気持ち」を思い出したからです。理由はわからんのですよ。今だから言えるけれどね。今でも学校に行くときは時々腹痛になります・・・。いい爺さんがね。

 
これは「学校」の問題ではなくて、実は「母親」との関係の問題じゃないのかなと思います。

secret


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