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あそびべのHARU・ここだけの日々
画家・榎並和春

回り道 - 2014.01.06(ポケットの窓から)

はる 4567
 欧米のことはよく知らないのだけれど、多分デパートでは展覧会のようなものはやらないのではないかと思う。私がデパートで個展を始めたのは2007年からだからそんなに古いことではない。話があるまでデパートで展覧会をするなどとはまるで考えていなかったので、思考の外にあったわけだ。今でこそデパートで個展をすることにほとんど抵抗感はなくなったけれど、最初はすごくちゅうちょした。そのことは何度も書いたけれど、まぁいいやな。嫌なら、飛ばしてください。

 「デパートの絵」と言えば思い浮かぶスタイルがあるでしょう。一般に「綺麗、分かりやすい、細かい」と言われる。お客さんは一見さんのお客様がほとんどで、絵に対して一家言を持つとか、趣味があるという人はまれだ。それが街中の画廊とはまるで違うところだな。そもそも最初の目的からして違う。絵を見に来たのではなく、たまたま近くを通ったら展覧会をやっていたから、寄ってみたというお客さんがほとんどだ。むるん私の名前を知っている人などいないわけで、私の絵がそういった一見さんに受け入れられるのかどうか、そのことも心配の一つだった。

 もう一つは、デパートで展示されたものは作品ではなく商品になる。奇麗事を言うわけではないが、絵を商品として描いてはこなかった。売れないと困るのだけれど、売るためには描いてこなかった。あくまでも自分の作品を描いてきたしこれからもそうするつもりだ。だから、売れないと私はクビになるだけですむけれど、間に入って私を見つけて紹介してくれた人に申し訳ない。

 一昔前はデパートの美術部というものがあって、専門に画商的なこともやっていたようだが、今は二三の老舗のデパートしか専門の画商さんはいない。ほとんどが他の独立した画商さんが企画で入っている。私もそういった画商さんと組んで個展をやらせてもらっている。どうやってそういったチャンスがあったのか、それはまぁめぐり合わせのようなものだ。やりたいと積極的に立候補したわけではない。全て天の采配で機が熟せばチャンスは向こうからやってくる。

 絵を売ることにちゅうちょする作家がいるけれどそれは違う。売れないのは魅力がないからだけれど、売れることで大いに自信になるし、お客さんの側から言えば、作品を買うことは自分の価値観、人生観を肯定して人生を豊かにできる。そのことは大いに啓蒙すべきだ。

  話は少し飛ぶけれど、日本の昔の生活はむろん今に比べて貧しかった。けれど例えば床の間とか、坪庭とか、庭がなければ盆栽とか、もっと下世話では玄関の下駄箱の上のスペースなどなど、四季折々の草木や掛け軸や書や歌を飾って日常の生活を肯定的に愉しんだ。今の生活は確かに物質的には豊かにはなったけれど、そういった心の余裕みたいなものを失くしてしまった様におもうな。

 作家の一つの仕事は作品を制作することであるけれど、もう一つの仕事はおこがましいけれど、そうやって絵を買ってもらって多くの人にその歓びを知ってもらうこともあるようにおもう。

 日本人は売れないのを自慢する傾向があるけれど、あまり売れることを自慢するのも考え物だけど、絵描きとして絵で何とか食べて行く、自立するという気持ちがなければ逆説的だけど、絵では食べてゆけない。


 
 


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