( はる51 より転載)
占いとかまじないその他霊感みたいなものは私にはないし、幽霊もUFOも見た事がない(UFOの方は一度見てみたいものだが)
高校を卒業してすぐの春休み、それまでの受験勉強のまねごとから開放されて、どうしても四国一周の巡礼の旅に出たくなった。適当に歩いてはヒッチハイクでと簡単に考え、当時実家の納戸の片隅にあったフーテンの寅さんが持っているようなトランクを片手に精一杯のかっこをつけて出発した。
当時はそんな変な格好のフーテンでもけっこううまい具合にヒッチハイクでき、まぁ途中色々な人にごちそうになったり家に泊めてもらったりで、なかなか快調な旅を続けていた。
室戸岬の手前に中村という小さな漁港がある、昼間のうちにそこに着いて、今日はもうここまでにしょうと銭湯を探して一風呂あびて、一膳飯屋で早いめしをくって、今日の寝場所を探しに町をうろついた。
町外れに小さな神社があった。どんな小さな漁港でもそうだが必ず海の安全を祈願する神社がある。お寺なんかと違いはるかに陰々減々として怖い、今ではそう思うが当時の私は何の恐れもしらない青少年だった。
さすがに神社のお社の中でずうずうしく寝る勇気もなかったので、同じ境内にある物置小屋のやっかいになることにした。こういった旅の場合早寝早起きが鉄則で日が暮れたら早々に寝ることにしている。旅の疲れもあってすぐに寝込んでしまった。
ザクザクと玉砂利をふむ音で目がさめた。不思議なことに私のいる納屋の前でぴたりと止まるのだ。「誰かが用事で納屋を開けにきたのか、まずいなぁどう言い訳しょうか」と思案してると、次から次ザクザク、ザクザクと何人もの人がやってくるではないか、こうなったら先手必勝、さきに扉を開けてあやまっちまえと根性を決めてエイッヤッと開けたら、だれもいなかった。
後日談、四国にはたくさんの巡礼さんがいるが何故か若い坊さんと一緒に旅することになった。その時にその話をするとさもありなんとこんな話をしてくれた。「神社はその地方独特の霊を祀ってあることが多い、良い霊もあれば悪い霊もある。たぶんそれはどちらかの霊が君にいたずらしたのだろう、それだけですんでよかったね。そいいった意味で一番安全なのはお寺の縁の下だよ」と教えてくれた。おしまい
Author:あそびべのはる
画家・榎並和春です。HPはあそびべのHARU・ここだけの美術館