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あそびべのHARU・ここだけの日々
画家・榎並和春

独創的手法 - 2010.12.07(ポケットの窓から)






 

 はる 3453

 平均律1

 油彩画を始めたきっかけは何だったのだろう。よくは覚えていないけれど、小学校か中学生の頃、風景写生で樹を描いた。普通の水彩絵の具を油彩画のように盛り上げて描いたらたまたまいい評価を得た。そうか油彩画というのは盛り上げて描くものなんだと納得した。



 兄貴との共同の勉強部屋に何点かの油彩画のカラー写真が飾ってあった。今から考えるとセザンヌの形のゆがんだ壷と器の絵と糸杉のゴッホだった。



 西欧文化に対する憧れはほとんど恋する乙女のようであり、舶来物のお菓子やおもちゃは垂涎のまとであり、当然絵画といえば油絵だった。



 絵を描き始めた頃、油彩画は独学であり、指南役はありとあらゆる美術雑誌と美術画集だった。そこでも最初に買ったのはセザンヌとゴッホだったな。



 美術雑誌「アトリエ」は、毎月買えないまでも必ず立ち読みをした。そこには一枚の絵がどのように描かれたのか、要領よく写真入で細かく掲載されていた。当時かなり有名な作家もそこに製作過程を掲載していて、今でもよく覚えているのは、国画会のスーパースターであったSさんが堂々と真似するならどうぞと言わんばかりに惜しげもなくご自分の手法を晒しているのに驚いて歓喜したものだ。さっそくそれを真似して何枚か仕上げたけれど、当然亜流にもならない似ても似つかない代物だった。



 技法というのは真似するものだし、真似されないのは魅力がないからで、そんな技法が一般化することはない。油彩画の技術はそれはもう西欧の有史以来の伝統があるわけで、とてもにわかに始めてもかなうものではない。ところが我々の先駆者は西欧に追いつき追い越すために血のにじむような努力をした。恵まれた者は実際に西欧に出掛けて、師匠について万巻の書を読んで研究した。それは美術だけではない黎明期の日本のどこでも見られた光景だったろう。



 そこには西欧の錬金術師やまがまがしい魔法使いと見間違えるような技術と技法が書かれている。我々にとって研究するとはそうやって万巻の書を読むこと、書物に書かれたことを忠実に再現して習得すること、そんな風にインプットされてしまった。そこにはオリジナルな独創がない。



 今日の新聞に今年度のノーベル化学賞の根岸英一さんの話が出ていた。独創的な研究、だれもやっていない大ヒットばかりを狙ってもだめだ。小さなヒットの繰り返しがやがて大きな独創的なアイディアに結びつくと言うふうなことが書かれていた。たぶんそれは今流行っている注目されている分野をやっても無理だとおもうんだな、もうすでに注目されている研究は多分手遅れなんだ。前ばかり見るのではなく一歩前に戻って考えることじゃないかな。そうすれば新しい糸口が見えてくるのだろう。



 新しいこと、誰もやってやっていない独創的なものということばかりに囚われていると、いっこうに新しいものは出てこない。なぜならそれは今の延長上にあることだからだな。いってみれば誰でもが遅かれ早かれ考え付くことだからだ。たての物を横にするといったバリエーションでしかない。



 本当の独創というのは元に戻った源泉から問い直すことからしか出てこないと思う。



 では絵画にとって源泉とは何かということだな。絵画を分解すれば、物質的には描く物と描かれるものにわけられる。絵の具ではない、描くものなんだな。キャンバスでも紙でも布でもない。ただの描かれる物だ。



 そしてその描くものは色の粉で粉末のまま使うのか、練った状態なのか、染料のような液体なのか、定着するのは水性の糊か油性の糊か膠なのか漆なのか合成樹脂なのか、それによって表現の技術が変ってくる。



 描かれる物については、紙なのか、布なのか、木なのか石なのか、漆喰なのか岩なのか、まぁキャンバスと言うのは実はものすごく特殊なものだったんだと気付く。



 そうやって自由に選択できるようにしておいて、あえて何を選ぶのかということだな。自分にとって何が一番手ごろで身近にあって有効かということだな。そして大事なことはこのことはどこにも書かれいないということだ。どこかに「・・の方法」というものがない。なぜなら技法そのものが今始めてあなたが作った、選択したものだからだな。



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